Oさん
裸足のまま、玄関扉に鼻先をこするほど近付き、外の様子を探る。
決して分厚くもない防音性の低い扉は、貴方の背中越しの少し離れた私の位置からでも、容易に外の音を拾えた。
薄い扉を隔てた裏で、全裸の変態が人前での自慰を想像しながら荒ぶる度、卑猥な嬌声が漏れる。
当然ながら、外の音が聞こえるので此方の声も筒抜けだ。
殆ど隣に入室した同店の女王様の退室を期待して益々滾らせる中、彼女の退室が先か、変態が逝くのが先か、当たり前のように低いオッズを付けられた変態の耳元で余計なチャチャ入れをしながら、愚かな予想通りになる未来に胸を踊らせる時間は思いの外楽しかった。
Kさん
蔑まれ、厳しく追い詰められる事によって、幾重にも成る現実からのしがらみの脱衣を繰り返し、繰り返し、とうとう正体を炙り出されてしまった。
晒された剥き出し本性は、実に素直だった。
許されるはずの無い行為に只ひたすら耽りながら、容赦無い罵詈雑言の雨を軀中に浴びせられ続けて、ついには快楽の止めを刺された。
耳をつんざく悦びの悲鳴が終始鼓膜を震わせていたせいか、少しの間だが、残り香のような甘い痺れを堪能した。