6月1日
Yさん 喉元に添えた指先に、軀を傾ける。 圧迫で充血した眼はやや涙ぐみ、その大きく開いた瞳孔にはしっかりと私を捉えていた。 唇を震わせ、か細くなる呼吸と脈を手のひらに感じながら、更に覆い被さる。 少しだけむせて、貴方はまた笑みを浮かべるのだが、その目線は私……を通り越したずっと先を見ているような、虚ろで快楽以外の全てを放擲した愚者の末路そのものに見えた。 もうじき意識も手放す頃だ。 既に視界も思考も、朝霧の濃く煙る中を漂っている状態にあり、私の声も殆ど届かなくなっている。 だから最期にひと言。 これだけ聞いて、堕ちなさい。 Nさん 人間ブランコは愉しい。 日頃の鬱憤も、足で蹴り上げて一気に加速させれば、しがらみも常識も、過ぎ去る景色の彼方へ全て置き去りにしてしまえるのだから。 ほんと、病み付きになる。 煌めくブーツは貴方の姿を取り込み、乱反射する照明は、私達の気狂いを助長させた。 今夜は全部忘れましょう。 快楽主義の名のもとに相応しい、平穏な夜に。 差し入れありがとう。